■#9「片想いかもしれない」

ある夜のこと、光流(三浦力)を頼って女子高生が緑林寮を訪ねてきた。
彼女は光流の中学時代の後輩で、名前は五十嵐巳夜(吉倉あおい)。
墨の華女子高等学校の2年生だ。
学校で悪いグループと関わっているせいか、面倒ごとに巻き込まれたらしく、
寮に泊めて欲しいと頼む巳夜を、男子寮に泊めるわけにはいかないと、追い返そうとする光流。
そのやり取りを見ていた一也は、巳夜を放っておけず、自分が責任を持って寮に泊めると言ってしまう。
最初は反対した光流だったが、一歩も引かない一也に押され、結局巳夜を泊めることになってしまう。

男だらけの寮の中で、巳夜はさっそく注目の的に。
「見せ物じゃねえんだよ!」と啖呵を切る巳夜に気圧され、一斉に静まる寮生たち。
一也は自分の部屋を巳夜に貸し、ドアの前に座り込んで寝ずの番を決め込む。
家出なのかと聞く瞬(鈴木拡樹)に光流は、あいつは一人暮らしだし、家出する理由なんかない、と答える。
さっそく巳夜に詳しい事情を聞く一也と光流。
聞けば、隣町の女子高・愛誠学院の生徒にインネンをつけられ、至る所で待ち伏せされているのだという。
どうやら墨女の生徒が愛誠の生徒の彼氏を奪ったためにモメており、なぜかその責任を巳夜が取ることにされているらしい。
明らかに利用されている巳夜に対し、むいていないのだから無理してつっぱるのはやめろと言う光流。
巳夜は何も言い返せず黙り込んでしまう。

翌朝、一也と共に廊下で見張りをしていたせいで、カゼをひいてしまった光流は、
巳夜と放課後喫茶店で落ち合う約束をして別れる。
その日の授業中、一也は巳夜が時折見せる表情が気にかかって仕方がない。
初めて会った時から、なぜかそれが心にひっかかっているのだ。
何かもう一言いいたそうな、そんな表情が――。

   

放課後、寮に戻った一也は、巳夜の姿がないことに気付く。
光流の部屋に行くと、そこには高熱を出して寝込んでいる光流の姿が。
もちろん、巳夜との待ち合わせの時間はとっくに過ぎている。
急いで彼女を迎えに行く一也。喫茶店に現れた一也を見て、巳夜はまたあの「ひっかかる表情」を見せる。
事情を話して寮に巳夜を連れ帰ると、光流が熱で朦朧としながらも、巳夜の家の周りには待ち伏せが無かったことを教えてくれる。
が、よほど熱がひどいらしく、まっすぐ座っていられない。
そんな光流の姿を見て、巳夜はこれ以上迷惑かけられないからと、寮を出て行くことを告げる。
どこか友達の所を当たってみるという巳夜に、なぜ家に帰らないのかと尋ねる一也。
お前には関係ない、とつっぱねる巳夜だったが、部屋を貸した自分には理由を知る権利がある、と一也に言われ、
しぶしぶ話し始める。 が、その理由は意外にも、幽霊が出るから、というものだった。
つっぱっている割に、巳夜はかなりの怖がりだったのだ。
やっぱり不良なんてむいてない、という一也の言葉に、どうせ自分は何をやっても中途半端だと泣き出してしまう巳夜。
今までこらえていたものが一気にあふれ出してきたのだ。
突然の涙に慌てながらも、一也は時折見せる巳夜の表情が、泣き出しそうになるのをこらえていたためだと気付くのだった。

結局、家に帰ることにした巳夜を送る途中、一也は、巳夜が悪ぶっているのは男のせいだと光流が言っていたのを思い出す。
それとなく尋ねると、巳夜は「典馬はそんな奴じゃない!」とむきになって否定する。
どうやら巳夜は、自分を好きだと言ってくれる典馬という男に嫌われるために不良になったようなのだ。
自分はバカでへそまがりで、相手と釣り合わないから、と。
典馬が自分のどこを好きになるというんだ、と言う巳夜に、一也は思わず言いかける。
「だって五十嵐さんは――」
可愛いじゃないか。そう言おうとして、言葉を飲み込んだ一也を怪訝そうに見る巳夜。
とその時、前方から、密かに待ち伏せていた愛誠のグループが近づいてきた。
あわや決闘か…というところで、光流に頼まれてあとをついてきていた忍(佐藤雄一)がタイミング良く助け舟を出し、事なきを得る。
しかし愛誠の不良たちに「明日桜木橋の下に来い」と言い渡された巳夜は、
自分で落とし前をつけることを決意し、一也を残して走り去ってしまう。

   

寮に戻った一也は、光流に事の成り行きを話す。
巳夜を助けに向かう光流について行こうとする一也だったが、あっけなく拒否される。
それでも、何とかして巳夜を助けたい一也。
一方、墨女の制服を着て、巳夜と共に愛誠のグループと対峙した光流は、次々に愛誠の不良たちを倒していく。
が、相手も何人か男を連れてきており、徐々に追い詰められてしまう。
絶体絶命かに思えたその時だった。バイクで古沢(長尾浩志)が駆けつけ、橋の上から一也の声が響く。
「待たせたな、五十嵐!」見上げると、緑林寮の仲間がずらりと並び、光流たちを見下ろしていた。
瞬や忍が協力して寮生たちに声をかけてくれたのだ。
さらに忍の機転により、渚までもが手下と共に登場し、
さすがに勝ち目がないと判断した愛誠の不良たちは一気に逃げ去っていった。
歓声を上げて勝利に喜ぶ寮生たち。

一件落着し、寮に帰ってきた一也たち。
巳夜は一也に礼を言い、一也の名前を尋ねようとする。
その時、巳夜のもとに駆け寄ってくる男がいた。巳夜が前に話していた、小泉典馬(標永久)だ。
慌てる巳夜に構わず、典馬は先輩である光流に礼を言い、巳夜の手を取って帰ろうとする。
そんな典馬に戸惑いながらも強く拒めない巳夜。
光流は2人のやり取りを見て、あいつら昔からずっとこんな調子だと呟く。
典馬に手を引かれて帰っていく巳夜をただ見送るしか出来ず、その後姿がいつまでも目に焼き付いて離れない一也だった…。

   
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