■#10「雨やどり」

ゴールデンウィーク最終日。
突然の雨に降られ、喫茶店でつかの間の雨やどりをする光流(三浦力)と忍(佐藤雄一)。
一向に雨の降り止まない空を見ながら、ふと忍は光流と出会った頃のことを思い出していた。

2年前の春。入試会場で出会った2人は、やがて緑林寮でルームメイトとして再会する。
天真爛漫で人懐こい光流は、寮内をはじめ、学校でもすぐに人気者に。
そんな光流を見て、忍は胸の内で「味方につけておいた方が得策だ」と考えるのだった。

新学期早々、3学年合同のバレーボール大会が開催され、試合を見学していた生徒達は忍の活躍ぶりを賞賛する。
だが、光流だけはそれを複雑な表情で見ていた。
その後の試合で、飛び出したボールを必死に追った光流は、そのまま体育用具に突っ込み気絶してしまう。
保健室に運ばれた光流を迎えに行った忍は、先ほどの試合中に手を抜いていたことを光流に見抜かれる。
内心驚きつつも笑顔でかわす忍だったが、「こいつ、思ったよりバカじゃないな」と、光流に対する認識を改める。

   

やがて生徒会の役員選挙の時期となり、副会長に立候補した忍は、光流に応援演説を頼む。
会長の有力候補はテニス部の仲林で、品行方正・謹厳実直。会長としては申し分の無い人物だ。
しかしもう一人会長候補として、なぜか英語部の斉木の名前が挙がっていた。

投票日が近づき、状況は依然仲林が有利だが、斉木の得票数も徐々に伸び始めていた。
そんな中、光流は仲林の応援演説をしてほしいと頼まれる。
光流の存在が想像以上に生徒の間に浸透していることを知る忍。
「君はいつも笑っているから自然と人が集まるのかな」と光流に告げるが、逆に「それはお前だろ」と返されてしまう。
初めて会って以来、忍の笑顔とすました顔しか見たことがない、と。
「たまには本気出せよな」という光流に、思わず返す言葉を失う忍。

それから何日も経たないうち、忍は覆面をした何者かに襲われそうになる。
そこへ通りかかった光流が覆面たちを追い払ったため、事なきを得るが、何かしたのかと問う光流に、忍は答える。
「ちょっと、斉木先輩の票集めを」

   

忍から一部始終を聞かされた光流。
自分が副会長として当選し、活躍するためには、生徒会長は仲林よりも、操りやすい斉木の方が都合が良かったこと。
まともに戦っては勝ち目のない斉木を勝たせるために人の弱みを調べ、それをタテに斉木に投票するよう根回しをしたこと…。
「自分は悪党だが、正しく生きてる奴らと戦って勝ててしまう」と語る忍。
仲間達の弱みをばらされたくなければ、馬鹿な考えは起こさないことだ、と忍に忠告され、光流は黙って部屋を後にする。

翌日、真相を話したことを後悔する忍だったが、光流から呼び出しを受け、放課後の図書室へ向かう。
用件を尋ねる忍に光流は答える。
「一晩考えて、これしか方法が思いつかなかったんだ」。
そう言うなり、光流は忍をいきなり殴りつけた。
突然のことに驚きながらも、弱みをばらされてもいいのかと問う忍。
対する光流は、やれるもんならやってみろ、と強気の態度を崩さない。
公衆の面前でそれを聞き出すことで、同時に忍の優等生の仮面をはがすことが、光流の狙いなのだ。
図書館でのケンカを聞きつけ、ギャラリーはどんどん集まってくる。
悪党であることがばれたところで痛くも痒くもないという忍に、だったらなぜずっと仮面を手放さなかったのかと問う光流。
それが無くなったら、何も残らないからだろう、と。
心を見透かされ、忍は声を荒げて光流に詰め寄る。
互いに一歩も引かない激しい殴り合いの後、光流の一撃を受けて倒れた忍は、意識を失ってしまう。

   

保健室で目を覚ました忍は、全て光流の計略だった事を知り、悔しさでいっぱいになる。
そこへ、光流と一弘(大口兼悟)の話し声が聞こえてきた。
今回は誰が見てもわかるくらいハッキリ忍を負かしてやる必要があったのだと。
悪い奴はいずれちゃんと負ける、だからお前が不幸になる必要なんかないんだ、と語る光流の声に、両手で顔を覆う忍。
これから3年間一緒の部屋で暮らせそうかと聞かれ、光流は「俺はいいけど、あいつが何て言うか…」と答える。
忍はその言葉に起き上がり、叫ぶ。
「このまま逃げるようなマネ誰がするか!いずれ必ずこの借りを返す!」
それを聞いた光流は笑顔で左手を差し出し、2人は力強く握手を交わすのだった。

後日行なわれた選挙は、会長に仲林、副会長に忍が当選する結果となった。
倫子(小橋めぐみ)のもとを訪れた忍は、昔、街道ごとにつくられたという一里塚の話をする。
そこは旅人達が一時的に雨や陽差しをしのぐ場所だったが、例え雨が止まなくてもずっとそこにいるわけにはいかない。
だけどそこは、とても居心地が良くて…。
倫子はそんな忍に「ダメよ、今さらおりようなんて」と告げる。
今でも忍は少し迷う。光流と自分の進む道は、違うはずだった。
だけど、もう少しだけここにいられたら。そうしたら――。

気づくと、雨はすっかり止んでいた。
喫茶店を後にした2人は、ばったり一也(井澤勇貴)と遭遇し、光流はいつものように一也をからかいまくる。
が、突然後ろから見知らぬ女が抱きついてきて、何事かと振り向く光流に、女は「助けて…」と消え入りそうな声で呟く。
突然のことに驚く3人だったが…。
   

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