■#13「ここはグリーン・ウッド」

巳夜(吉倉あおい)への気持ちを抑えきれず、思い悩むあまり熱を出してしまった一也(井澤勇貴)。
調子はどうだと尋ねる一弘(大口兼悟)に、一也は自分がこれからどうすべきかを相談する。
もし、好きになった人に他に相手がいたら…。
自分のせいで彼女や、相手の男を傷つけることになると言う一也に、一弘は「それは違う」と教える。
お前は自分が悪者になることを恐れているに過ぎない、と。
その言葉にハッとした一也は、自分の気持ちに整理がつく。
一弘は、光流(三浦力)が一也に買ってきたパンの袋からレシートを取り出し見せる。
レシートの裏には光流の字で、巳夜の電話番号が書かれていた。

その夜、一也は巳夜に自分の気持ちを伝えることを決意する。
受話器を握り締め、ようやく電話をかけた一也。
巳夜本人が出たものの、一也が想いを口にする前に、「ごめん!」と言ったかと思うと、巳夜は一方的に電話を切ってしまう。
翌日から、寮では一也が一瞬でフラれたという噂が飛び交う。
おせっかいした身としては、何とかしてやらねば…と思う光流だったが、
一也は光流の部屋に駆け込んでくるなり、巳夜の住所を教えて欲しいと言ってきた。
何度巳夜の家に電話しても、誰も出ないのだという。
フラれたんじゃなかったのかと聞く忍(佐藤雄一)に、まだフラれてない、とハッキリ答える一也。
そう、一也はまだ巳夜に何も言っていないのだ。
ちゃんと気持ちを伝えて断られるまでは、あきらめるわけにいかない、と話す一也に、胸を打たれた寮生たちは、
その前途多難な片想いを皆で応援することにするのだった。

   

忍の提案で、巳夜の高校、墨女の校門前で待つことにした一也だったが、一向に巳夜は出てこない。
次の日も、そのまた次の日も…。
隠れて一也を見守る光流と瞬(鈴木拡樹)も心配そうに見つめる。
毎日校門で誰かを待っている一也を見て、墨女の女生徒が声をかけてきた。
そして、巳夜が腕の骨を折って入院している事を教えてくれる。
驚く一也だったが、光流が巳夜の入院先を調べてくれ、翌日さっそく病院に出向く。
…が、恐るべし、一也のスカっぷり。
なんと巳夜は今朝退院したばかりだという。思わずがっくりする一也。

巳夜の家では、退院した巳夜を気遣って典馬(標永久)が手伝いに来ていた。
巳夜は、骨折したのは黙って一也からの電話を切ったバチがあたったのだと思う。
その時電話のベルが鳴り、受話器を取った巳夜だったが、相手がわかった途端に切ってしまう。
一也からだ。
またしても電話を切られてしまった一也は、忍に便箋をもらい手紙を書くことに。
入院していたと聞いて心配していたこと、どうしても聞いてもらいたい話があること、来週の月曜に学校に会いに行くので、校門の近くに必ずいて欲しいこと…。
数日後、巳夜の家のポストに一也からの手紙が届く。
が、それを見つけたのは巳夜ではなく典馬だった。
手紙を握りつぶし、ポケットに入れる典馬。

   

そして月曜日。
校門の前に立っている一也に気づき、思わず身を隠す巳夜。
どうして一也がここに…と慌てる。やはり現れない巳夜に、さすがに一也は肩を落とし、光流と瞬もいよいよ心配になってくる。
日も傾き始めたころ、一也の前に現れたのは巳夜ではなく、典馬だった。
その手には一也の出した巳夜への手紙が握られていた。
五十嵐さんは読んでないのかと問う一也に、読ませるわけないだろ、と返す典馬。
こんなことをすると、巳夜の立場が苦しくなるだけだと。だが一也は、典馬にきっぱりと告げる。
「でも、おれ五十嵐さんが好きなんだ」。
それに対し典馬は「巳夜ちゃんは僕のだよ」と微笑む。その時、ついに巳夜が現れた。
が、一也と目を合わせようとしない。
何も言わずに駆け出す巳夜の背中に、どうして逃げるんだ、五十嵐!と呼びかける一也。

帰りの駅のホームで、巳夜は自分自身に問いかけていた。
自分は何から逃げているのか。一也から?いや、違う…。今のままでいれば、誰とも争わずに済む。だから、忘れてしまえ…。
葛藤する巳夜に、典馬は優しく、巳夜は今までどおりでいいんだよ、と告げる。しかし巳夜は泣きそうな顔で答える。
「でもおれ、あいつのこと好きなんだ」――。

   

翌日。教室で机に座りうつむいたままの一也。
誰もが「やっぱりダメだったのか…」と思ったその時、声が響いた。
「門の前に女の子がいるぞー!」
それを聞いた一也は驚きながらも、一目散に校門前へ駆け出す。
そこには、雨の中一也を待つ巳夜の姿があった。
何も持たずに飛び出してきてしまった一也に、瞬がそっと傘を差し出してやる。
光流や忍をはじめ、クラスメイトや寮の仲間達も駆けつけ、行方を見守る。
巳夜は一也に、今まで逃げてしまったことを謝り、典馬とケンカしてしまったと告げる。
でも、一也に会いたかった。
もっとちゃんとした人間になりたかったのだと…。
巳夜の精一杯の告白を聞いた一也は、巳夜の肩をしっかりとつかんで、こみ上げてきた想いを言葉にする。
「大丈夫!おれがついてるよ…!」
それを聞いた巳夜は、今にも泣き出しそうな顔で一也にもたれかかって…。
歓声をあげ、手にした傘を一斉に放り投げる緑都生たち。 舞い上がった色とりどりの傘が、2人を祝福しているかのようで…。

数日後、緑林寮では三年に一度の寮祭が開催されていた。
古沢(長尾浩志)をはじめ元寮生たちも駆けつけ、大いに盛り上がる寮祭。
すみれ(福井裕佳梨)と共に訪れた一弘に、巳夜との事をからかわれる一也。
それを見て光流は、一也は幸せ者だよなと呟く。忍は思う。
今、自分がどれぐらい愛されているか、そのときにはきっと気づかないものなんだと…。
卒業して寮を出たらどうする?と尋ねる忍に、光流はさらりと答える。
「家賃折半として九万以下のとこな。おれ、それ以上出せねぇから」
一瞬、驚く忍だったが、「2人で9万か…せまいな」ふっとやわらかく微笑むのだった。
初めて寮の中に入ったというクラスメイト達を案内してやる一也。
寮祭はまだ、始まったばかりだ。

昔日の時が過ぎようとも、ここちよい風を運んでくれる。
一歩踏み込めば夢と笑顔、空いっぱいの青春が今、よみがえる。

そういつも、ここはグリーン・ウッド――。

   
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